君の隣で、私になれた



何なんだこの会話。


叱ってるんじゃない。

教えてる。

違う。

教え込んでる。




「昨日」

「泣いた理由、自分で分かってる?」

「……はい」

「違う」

「……ごめんなさい」

「違う」


「泣いた理由は俺のせい?」

莉桜は首を横に振る。

「違う……」

「じゃあ何」


「……私が悪かった」

「そう。次からは?」

「……同じことしない」

「違う」


「……ちゃんと考えて行動する」

「そう。最初からできたよね?」




俺は動けなかった。


怒鳴り声なんかじゃない。

暴力でもない。


なのに。

今まで聞いたどんな喧嘩より。

聞いてて苦しかった。


恋人同士の関係性じゃない。

先生と生徒でもない。

親子でもない。


もっと歪。



莉桜は自分の意思で話してない。

“正解”を答え続けている。

湊さんが求める“正解”を。



そして。

その姿があまりにも自然だった。


つまり。

きっと今日だけじゃない。

何度も。

何度も。

繰り返してきたんだ。




俺は莉桜のスマホを握ったまま。

一歩も踏み出せなかった。