君の隣で、私になれた



ーーー翌日の夕方。

ーー琉生side.


バイト先。

バックヤード。


更衣室から莉桜が出てくる。



「あれ?」


首。

また肌色のテープ。

しかも今回は…


一枚。

二枚。

三枚。

……

七枚。



「莉桜、それどうした?」

思わず聞く。

「あ、これ?」

莉桜は首元を隠すように笑う。

「虫刺され!」

「……」


虫じゃない。

そんなのすぐ分かった。


でも。


「そんな刺される?」

「今年ひどくて!」

莉桜は笑う。

笑顔。


でも。

どこかぎこちない。




その時。


莉桜がグラスを取ろうとして。

袖が少し上がる。

手首。

そこにもテープが貼ってある。


「腕も?」

「あー!」

慌てて袖を引っ張る。

「そこも虫!」

「……そっか」

それ以上は聞かなかった。


恋人同士のこと。

俺が踏み込む話じゃない。

そう思ったから。




ーーそして営業中。


莉桜の様子がずっとおかしい。

グラスを落としそうになる。

注文を聞き間違える。

ぼーっとしてる。


「莉桜!」

「あ、ごめん!」

新が仕事をフォローする。

「今日は俺がレジ入る」

「ありがとう」


きっと新は「体調悪いのかな」くらい。


でも。

そうじゃない


笑うタイミング。

返事。

全部少し遅い。


何より笑顔を作ってる。