その手首を湊さんが掴む。
手じゃなくて手首。
少しだけ強い力で。
「……っ」
莉桜の身体が小さく引かれる。
「行くよ」
優しい声。
でも。
そのまま歩幅を合わせることなく進む。
莉桜は半歩遅れてついていく。
手首を掴まれたまま。
助手席へ向かう途中。
莉桜が。
一度だけ振り返った。
俺を見る。
何か言いたそうな目。
でも。
何も言わない。
すぐに前を向く。
助手席。
湊さんがドアを開ける。
「乗って」
莉桜が乗り込もうとする。
その背中を。
軽く押す。
まるで車へ押し込むように。
「……」
ドアが閉まる。
バタン
少しだけ強い音。
そして運転席へ向かう湊。
車のドアが閉まる。
「……」
その後ろ姿を見送りながら。
俺の胸に。
今までで一番大きな違和感が残った。
