「琉生ってさ」
「ん?」
「いつも助けてくれるよね」
「そうだっけ?」
「もう何回助けられたか分かんない」
「大袈裟だって」
「ほんとだもん」
2人で笑い合う。
そこへ。
背後から湊の声。
その瞬間。
私は背筋が凍る。
それから悟る。
あ、やばい…
そして上手く笑えない。
ーー琉生side.
「お待たせ」
湊さんの声。
その声が聞こえた瞬間だった。
さっきまで笑っていた莉桜の表情が。
ふっと消えた。
笑顔がなくなる。
肩が少しだけ強張る。
「……」
俺は思わず莉桜を見た。
湊さんは俺の方へ歩いてくる。
「神崎くん久しぶり」
笑顔だった。
「お久しぶりです」
「髪暗くしたんだ?…余計モテそう」
「え?」
「あ、そういえば…」
気のせいかもしれない。
『余計モテそう』
ここだけは無表情で。
声色が違ったような気がした。
「さっき莉桜助けてくれてありがとう」
「いえ。たまたま近くにいただけなんで」
「そう」
湊は小さく頷く。
「莉桜、神崎くんによく助けられてるんだね」
「……そうみたいですね」
俺は少し笑った。
「困ってたら放っておけなくて」
「友達ですし」
悪気なんてない。
本当に。
そのつもりで言った。
でも。
湊は笑ったまま言う。
「そうだよね」
「これからも”友達”でいてあげて」
「……」
一瞬だけ。
空気が止まった。
「はい」
俺は笑って頷く。
「もちろんです」
その返事を聞いた瞬間。
湊の笑顔が。
ほんの少しだけ深くなった。
「莉桜」
湊さんが莉桜を呼ぶ。
「うん」
莉桜が歩き出す。
