「おつかれー」
居酒屋の個室。
扉を開いた瞬間、聞き慣れた声が飛んできた。
「莉桜遅いー!」
「ごめんごめん、フライト押しちゃって」
「絶対コンビニも寄っただろ」
「寄った」
「ほらな」
新が呆れたようにため息をつく。
社会人になって2年。
働く場所も、住む場所も、生活リズムもバラバラになった。
それでも私たちは、大学時代から変わらず月に1度集まっている。
紅羽。
新。
琉生。
そして私。
気を遣わなくていい、大切な居場所。
「とりあえず注文しよー!」
メニューを開いた紅羽が声を上げる。
「私ビール!」
「俺も同じで」
「俺も!」
紅羽に続いて新と琉生が即答する。
「莉桜は?」
「あー…」
一瞬だけ迷ってから、小さく笑う。
「ウーロン茶で」
「えっ」
紅羽が露骨に顔をしかめた。
「また?」
「また」
「社会人1年目の莉桜どこいったの?」
「たしかに」
新まで頷く。
「前は普通に飲んでたよな」
「まあ…」
曖昧に笑って誤魔化す。
本当のことは言いづらい。
正確には飲めないわけじゃない。
ただーー
『飲み会はいいけど、酒は飲まないで』
そう言われてるだけだ。
心配して言ってくれているのも分かる。
だから私は、いつも従っている。
