この世界に来た“最初”のアリス。
彼女の自由さに、女王様は憧れに近い感情を抱いていた事を僕は知っている。
だからこそ、“今の”アリスを嫌っていた。
今のアリスは…僕が作った機械人形だから。
“最初”のアリスを模倣して作った、“偽物”のアリスだから。
偽物はこの世界にいらないと、館から追い払おうとしたり、首を切り落として処刑したり。
女王様の接し方を見ていると、アリスが壊れてしまうのではないかとハラハラしてしまう。
「女王様は短気な方ですからね…自分は例え偽物だろうと、アリスがいてくれるのなら幸せですが」
帽子屋がニコリと笑った。
彼はアリス自体に固執している。
だからというわけでもないけど、彼の部屋は常に煙たい。
幻覚を見せる植物の香りをお茶会の部屋全体にまいているからだ。
なぜそんな事をしているのか聞いてみたら、「アリスとの記憶を何度でも再生したいから」と不思議な事を言われた。
意味は分からなかったけど、確かに彼の部屋に行ったアリスは幻覚を見るようだし…。
“アリスとの記憶を再生する”というのは言葉通りの意味なのかもしれない。
僕はその幻覚に耐性のある薬を飲んでいるから、幻覚を見た事はないけど…女王様達はどうだろう?
帽子屋の事を嫌っているようだから、そもそも部屋に行かないか。
考えを巡らせていると、帽子屋が頭を下げた。



