いつもの通り、アリスを部屋のベッドに寝かせて大広間に戻る。
そこにはチェシャ猫以外の全員が顔をそろえていた。
「おや、これは珍しい」
白い耳をピョコッと動かす。
すると、帽子屋が僕にヒラリと手を振った。
「しばらくぶりですね、白ウサギ…アリスは部屋に運んだので?」
「うん、今回もダメだったよ」
そう言って笑うと女王様が呆れたように息を吐いた。
「もう諦めたらどうなの?アリスは何度目覚めても“外”に出たがるわ…お前の手によって、そう作られているのだから」
「うーん、でも次は結果が変わるかもしれませんから」
「どうかしらね、いっその事もう壊してしまえばいいのだわ…あんな“まがい物”」
まがい物。
その言葉に僕は女王様を見つめた。
背後に付き添う四人の騎士が女王様を庇うように前へ出る。
僕はどんな顔で彼女を見ていたんだろう。
「お止めなさい、お前達。こんな狂った奴と一緒にいたらこちらまで頭がおかしくなる。一度城に戻るわよ」
『はい、女王様』
五人が背を向けて歩いて行く。
その間際、女王様は確かに呟いた。
「アリスは…あの子は一人で充分だわ」
外へと繋がる扉を開けて、去って行く女王様。
彼女がこの館に来る理由は、アリスをこの場所から消すためなんだろう。



