それでも、心の片隅に残っている願いを忘れたわけでは無かった。
外に出て、お家に帰りたい。
だからどんなに楽しくても…いつかはこのお茶会を終わらせないと。
パパとママとお姉ちゃんが待っている。
私は数回目の紅茶を飲み終わるなり、白ウサギの袖口を掴んだ。
「ねえ白ウサギ。すごく楽しいけれど…そろそろ行かなきゃ。このままじゃ日が暮れてしまうわ」
「おっと…そうかい?アリスがそう言うなら仕方ないね」
白ウサギは名残惜しそうにティーカップを置き、イスから立ち上がった。
それに気づいた帽子屋と三月ウサギが寂しそうな表情を浮かべる。
「おや…もう行かれるのですね、二人とも」
「きっとまた、すぐに皆でお茶会ができるさ」
「…そうですね、それを願っておりますよ」
帽子屋が深く頷き、私に手を振った。
それに頭を下げて、白ウサギと部屋を出ようとすると三月ウサギに「待っておくれ!」と呼び止められる。
彼は洋服のポケットからラッピングされた可愛いクッキーを二枚取り出すと、それを私達に手渡した。
「後で食べようと思っていた、とっておきのおやつさ!持っていって食べるといい!」
「まあ…ありがとう。いただくわ」
お礼を言って部屋の奥へと進む。
去り際に、小さな声で帽子屋が呟いた。
「また、お会いしましょう」
その声はとても穏やかだった。



