「それなら、やっぱり先に館の中を案内させてほしいな。それでもアリスが家に帰りたいって言うなら…その時は出口まで連れて行ってあげる」
私は返事に迷った。
本当は今すぐにでも帰りたい。
だけど…彼がここまで館の探検を勧めるって事は、私に会わせたい人や見せたい物があるのかもしれない。
それにこの申し出を断って一人で出口を探すより、申し出を受けて男の子に案内してもらった方が効率も良いと思った。
だから、私は頷く。
「分かったわ、その時は出口までよろしくね」
「やった!」
私の承諾に男の子は嬉しそうに飛び跳ねる。
無邪気な子だなぁ。
見ていると、こっちまで楽しい気分になってくる。
「それじゃあ案内するよ、行こう!」
せっかちな性格なのか、彼は名乗りもせずに先に進もうとする。
「待って、まずはあなたの名前を聞かせて。じゃないとなんて呼べばいいか分からないわ」
私の問いかけに、男の子は「確かにそうだね」と大きく頷いた。
そして私に優しく微笑み、告げる。
「僕は“白ウサギ”…よろしくね、アリス」
彼の名前を聞いた瞬間、どこかからチクタクと秒針を刻む音がした。



