「こんな場所で行き詰まってるなんて、今日のアリスはアリスらしくないニャア」
ふわりと宙に浮きながら、その人はニヤニヤと琥珀色の瞳を細める。
紫色の髪の毛をした男の人。
その頭には同色の獣耳がピコピコと動いている。
お尻からは濃い紫と薄い紫のシマ模様が特徴的な、ふさふさの尻尾が左右に揺れているのが確認できた。
その目立つ容姿は薄暗い通路の中でもはっきりと存在感を放っている。
「あなたは、誰なの…?」
尋ねると、その人は宙に浮かんだまま寝転ぶように体勢を変えてあくびをした。
「誰でもいいじゃニャいか。俺はただのノラネコさ、お前さんの好きに呼べばいい」
「ノラネコ…?あなたはネコなの?」
「ネコかもしれないし、ヒトかもしれない。だけどそんな事はどうでもいいニャア」
指先を丸めて目元を擦るその仕草は、まるでネコがお顔を洗う時みたい。
私はネコさんに一歩近づいた。
「ネコさん、教えてほしいんだけど…この通路から出るにはどうすればいい?」
体を丸めて私を見るネコさんが、人差し指を自分の口元に添えた。
「う~ん、そうだニャア…」
その視線が右に左に、上に下に動く。
やがて結論が出たのか、騒がしい瞳が私の姿を映した。



