囚われアリスは館の中


二人は会話に夢中になっている…。

今なら、扉の向こうに行けるんじゃ…?

私はなるべく音を立てないように、草花に隠れて進む。

スペードとハートの足元を通り抜け、扉へと駆け寄った。

次の部屋に入り、扉を背にしたままそっと頭上を見上げる。


「ちょっと見た目が良いからって調子にのってると、そのうち痛い目をみるからね!」


「調子にのってるのはハート、キミだよ。いつも女王様に猫なで声ですり寄って…可愛がられているからって何でも許されると思わない事だね」


二人は、まだ会話を続けている。

足元を通った私には、まだ気づいていないようだった。

このまま先に進んでしまおう。

そう思い、長い通路を駆け出した。

遠くでスペードとハートの声が響く。


「あー、もう!スペードと話してるとイライラしてきた」


「お互い様だね」


「そろそろ小汚いネズミをいたぶって遊ぼうか」


「そうしよう」


小汚いネズミ…?

その言葉が引っかかり、走りながら後ろを振り返った。

そこには。

走る私を見て、キラリと光る二人分の目__。


「っ…逃げなきゃ!」


止まりそうになる足を一生懸命に動かす。

たぶん、最初から私がいる事はバレていた。

その上で今までワザと泳がされていたんだろう。

後方から大きな足音が迫ってきた。