「ぅ、あっ…!!」
大きな音を立てて、体が壁に打ちつけられる。
痛みに顔を歪めて顔を上げると、スペード柄の青い衣服を着た男の子が無表情で長槍を持っていた。
信じられない。
あんな細い体で槍を振り回して、私をなぎ払ったなんて。
男の子は槍の柄を握ったまま、顔色も変えずに淡々と言葉を口にする。
「女王様の機嫌を損ねた罪人に、弁明なんて許されないんだよアリス」
「よくやったわ、スペード」
「お褒めいただきありがとうございます、女王様」
女王様が“スペード”と呼ばれた槍使いの男の子の頭をなでる。
初めてスペードの顔が緩み、嬉しそうに微笑んだ。
それを後ろの三人が羨ましそうに見つめている。
…どうしよう。
どうすればいいの?
外への扉からだいぶ離されてしまった。
走っても、この痛みじゃ途中で追いつかれる。
私は真横にあるもう一つの扉を見た。
もう、ここに逃げ込むしかない…!
唇を噛み締めながら、足に力をいれて立ち上がる。
そして転がるように扉の中へと入り、内側からカギをかけた。
明かりのついたその場所には調理器具と食品が置かれている。
「ここは…キッチン?」
呟いた瞬間、施錠した扉の向こうから声が聞こえた。



