視線を落とすと、私の靴のすぐ横で一枚のトランプが尻もちをついていた。
「ちょっと、危ないだろう!気をつけてくれ!」
「ご、ごめんなさい…気づかなくて」
急いで足をどけると、トランプはすぐさま立ち上がり忙しない足取りで去っていく。
部屋の中を見渡すと、たくさんのトランプ達がいた。
皆が手にスコップやじょうろを持っていて、白いバラのお世話をしているように見える。
その中にはなぜか赤いペンキとハケを持ったトランプがいて、私は首を傾けた。
その内の一枚に声をかける。
「ねえ、そのペンキはどこに塗るの?」
「これは白いバラに塗るんだよ。そうして赤いバラに変えるのさ」
「何でそんな事をするの?白いままでも美しいのに…」
私が言うと、トランプはペラペラの体を震わせて声を絞り出した。
「そんなのダメだよ、女王様は赤いバラがお好きなんだ!この白いバラは時間が経つとペンキが落ちるから、急いで赤く染めなければ…」
「赤く染めなければ…どうなるの?」
「処刑されるのさ…あぁ、恐ろしい」
言い終わるなりトランプは、赤いペンキを近くの白いバラに塗り始める。
視線を移すと、他のトランプ達も同じように一心不乱にバラを赤く塗っていた。
その集中した姿からは緊張感が漂っていて…声をかけるのをためらってしまう。



