囚われアリスは館の中


「あーあ、ただのトランプに戻っちゃった」


「時間が経つまでそのままだなんて、哀れだなぁ」


「でもぼく達は違う、まだ動ける」


「登れや登れ、女王様のためにシャンデリアをピカピカに磨くんだ」


あざ笑うように、歌うように言葉を連ねるトランプ達は、一枚も心配する素振りを見せずにロープを登る。

やがて一枚、また一枚とシャンデリアに到着すると、何事もなかったかのように掃除を始めた。


「ねぇ!誰も下りてきてくれないの!?仲間が落ちて動かないのよ!」


上へと届くように声を張り上げるけど、誰も反応すらしてくれない。

なんて薄情なトランプなんだろう。


「何もしてあげられなくて、ごめんなさい…」


私は動かないトランプを服のポケットにそっとしまい込み、目の前の扉を開いた。

その瞬間、ふわりと優しい香りが辺りに広がる。

そこは広い部屋だった。

ただ、床に敷かれているのは絨毯(じゅうたん)ではない。

整備された土…そこから長い茎と葉を生やして、美しい白いバラが咲き誇っていた。


「スゴい…!なんてキレイなの」


白いバラに見とれて一歩を踏み出す。

すると足元から「ぎゃ!」と高い声が聞こえた。