囚われアリスは館の中





「…茶色のカギを使おう」


テーブルから鍵を取り、ドアノブについた鍵穴に差し込む。

ガチャリと音がして、扉が開いた。

その瞬間、扉の先から良い香りがして私は鼻をスンスンと動かす。

これは…花の香り?


「お花が咲いてるようには見えないけど…」


辺りを見渡す。

扉の向こうに広がる薄暗くて長い通路。

真ん中に白い道があって、その両脇を埋めるように土が敷き詰められている。

そこから生えた植物は奇妙に曲がりくねって、壁を這うようにツルを伸ばしていた。

そこには花なんて一つもない。

それじゃあ…この香りはどこから?


「とにかく、先に進んでみよう」


植物の生い茂る通路をひたすら歩いて行く。

そしてもう少しで通路の真ん中という所で、私の足は止まった。

…今、何か聞こえたような…?


「気のせい…かな」


再び歩き出す。


__くすくす。


__ふふふ。


__あはは。


やっぱり気のせいじゃない。

もう一度、足を止めて辺りを見渡す。


「誰か、いるの…?」


返事はない。

そのかわり、耳元で笑い声が聞こえた。

肌がぞわりと震えあがり、私は走り出した。


__うふふ。


__あっはっは。


__へへへ。


自分の足音に交じって聞こえてくる“笑い声”を振り切り、通路の先の扉を開けた。


「…えっ…?」