「アリスは眠ったのかい?」
紫色のノラネコが宙に浮かんで笑っている。
その指は鼻をつまんでいて、この場に充満している煙を吸わないように徹底していた。
帽子屋はそれに目もくれず、動かないアリスの体を持ち上げる。
「ええ。此度もダメでした。外に出たいとの事でしたので、考え直してもらおうと思って」
「あはは…可愛い言い方をするじゃニャイか。どうせまた記憶は消すんだろ?」
「はい、“彼”を呼ぼうと思います…アリスの事については彼以外に頼れる相手はいませんから」
選ばれなかったあの扉の向こうで、彼はまだアリスを待っているだろう。
その直感を帽子屋は信じていた。
だって、これまでもそうだったから。
「まあ、そうだろうニャア…けど、いつまでこんな事を続けるんニャア?何度このアリスに夢を抱く?」
帽子屋を見つめながらノラネコが声のトーンを落とした。
「そうですね…アリスが自ら“この場所”を選んでくれるまで、でしょうか」
「途方がないニャア」
「ふふ、全くですね」
三月ウサギにお茶会の後始末を任せ、帽子屋はノラネコに背を向ける。
目指すのはアリスの部屋。
再び記憶を失い、目覚めた時に彼女がいるべき部屋。
「あぁ、可愛いアリス…いつかあなたが“この場所”を選んでくれるまで、自分達はお茶会を続けましょう」
目覚めぬアリスの髪に、そっと口づけを落として帽子屋は足を動かした。
【パターンA】
END1…帽子屋のお茶会
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