「三月ウサギを助けてくれただけでなく、女王の臣下まで引き下がらせるとは…やはりアリスに頼んでよかった」
彼はそう言うとテーブル上のティーポットを手に取り、中身の紅茶をカップにそそいで私に手渡す。
ほのかに湯気を立て、並々とそそがれた朱色の液体に私の顔が反射する。
帽子屋がニコリと笑った。
「何かお礼をしなければいけませんね。困っている事などがあれば、どうぞ遠慮なくおっしゃって下さい」
困っている事…?
強いて言うなら、たった一つだけある。
私は温かいカップをテーブルに置いて、口を開いた。
「それなら…この不思議な館の外に出る方法を教えてほしいな」
その瞬間、部屋の空気が変わった。
皮膚を突き刺すような視線を感じて、恐る恐るその方角へ目を向ける。
「………」
帽子屋が真顔で首を傾げていた。
さっきまで優しく笑ってくれていたのに。
今、私へと向けられているそれは、とても冷ややかだった。
「…そうですか、アリスは外に出たいと…」
ボソボソと呟いて、帽子屋は再び笑みを浮かべた。
「分かりました、お茶会が終わったらお教えしましょう」



