「それで涙の川を泳いでいたパスタを釣り上げたんだが、えらく塩がきいていて泣く泣く川に戻したんだ!」
「それは途方にくれる愉快な休日でしたなぁ」
「全く、割れたタマゴは戻らないとはよく言った物だよ!」
「それはそれは、砂糖の噴水を出すゾウの行進のように奇跡的な確率でしょうねぇ」
三月ウサギと帽子屋が楽しそうに談笑している。
聞こえてくる内容はちっとも理解できないけれど、二人の会話は弾んでいるようだ。
私はそっと扉を閉めて、二人のいるテーブルに近づいた。
帽子屋が私に気づき、手招きをする。
「おやアリス、どうぞこちらへ座って下さい。お茶会を始めましょう」
私が帽子屋の隣のイスに腰掛けると、三月ウサギが頭を下げる。
「さっきは危ない所をありがとう、アリス!」
「私は何もしてないわ、あれはネコさんが__」
「いやぁ、帽子屋にも見せたかったよ!アリスとスペードのトランプ兵長との一戦!全く生きた心地がしなかったんだから!」
興奮した様子で語る三月ウサギに、私の声は届いていなかった。
身ぶり手ぶりで話を盛りながら、三月ウサギが帽子屋に一部始終を説明する。
最後までネコさんが出てこなかったその話を聞き終えて、帽子屋は私に微笑んだ。



