彼は私を見つめて、スッとその瞳を細めた。
「女王様のために収穫された野菜に手を出した、小汚いウサギを庇うお前は…アリスだね」
「あなたまで…何で皆、私の名前を知っているの?」
「皆が知っているんじゃない、お前が知らないだけだよ」
スペードのトランプ兵長が手の中でぐるりと槍を回した。
その鋭利な刃先が、私に向けられる。
「女王様の敷地に入った上、泥棒ウサギを庇ったんだ。生きて帰れるなんて思わないでね」
「あなた、何をす__」
床を蹴り飛ばす勢いで私へと直進してくるスペードのトランプ兵長。
震える三月ウサギを抱えて身を翻す。
鋭い槍で串刺しにされる所を、間一髪でかわして距離をとった。
「へえ、避けたんだ。次はどうかな」
槍を再び構えて、彼は私を見据えた。
「アリス!ワタシを置いて逃げるんだ!帽子屋の所に、早く!」
「そんな事できない!一緒に逃げるのよ!」
三月ウサギを抱き締める腕に力がこもる。
扉まで数メートルの距離。
三月ウサギを抱えて、次の一撃をかわせるだろうか。
とにかく、やってみるしかない。
私は意を決して扉まで走った。
「__遅いね」
槍の刃先が私の顔をめがけて突進してきて__。



