「黒いアリスが向こうを探すなら、私はこっちの扉から行こうかな」
左側の扉を開くと、立て付けが悪いのかギィと嫌な音を立てた。
その先に広がる通路はやはり薄暗い。
そして…何より気になったのは床だった。
「何これ…」
赤い何かが辺り一面に飛び散っている。
しゃがみ込んで、床に落ちていた赤を指で触ってみた。
付着するさらりとした液体。
その臭いはツンとくる独特な物。
血では…無い。
それじゃあ、これは…。
思い当たる物が一つだけあった。
「これは…ペンキ?」
だとしても、何でこんな所にペンキなんて。
誰かのイタズラなのかな。
そう思い、再び立ち上がる。
すると、通路の奥から声が聞こえた。
「…れ……け…!」
遠くにいるのか、声が上手く聞き取れない。
飛び散るペンキをなるべく避けながら、通路の奥へ足を進める。
「たす……くれ……!…に…る…!」
段々とその声はハッキリと聞こえるようになった。
「誰か、助けてくれぇ!ワタシはここにいるぞ!」
真っ直ぐ伸びた、長いペンキまみれの通路の先。
赤く染まった扉の向こうから聞こえる悲痛な声に、私はドアノブをひいた。
ガチャリと音が鳴り響く。
部屋の中には小さな明かりが灯ったランプが一つ置かれていて…その真上の天井に吊された小さなオリを照らしている。
その中にいたのは、一匹のウサギ。
垂れ耳のその子は私を見るなりオリの中から必死に声をかけてくる。



