「ありがとう、優しいアリス…そのバラの花はこちらにある花瓶にさしてもらえますか?」
「ええ、構わないけれど…」
私は帽子屋に言われた通り、花瓶にバラをさす。
それをテーブルの上に戻すと、お茶会の場は更に華やかさを増した。
黒いアリスが言ってた通り、お花があるだけで雰囲気が変わる。
「ところで…ちょっといいですか?アリス」
私の気分が少しだけ向上した瞬間、帽子屋が話しかけてきた。
「どうしたの?」
「人助けだと思って一つ…頼まれ事を引き受けていただけませんか?茶会に参加するはずの“三月ウサギ”を見つけてきてほしいのです」
「…“三月ウサギ”…?」
「ええ、自分とティーポットの中の“眠りネズミ”、そして三月ウサギがいなければ茶会は永遠に始まらない…つまり終わりも訪れないのですよ」
帽子屋はカップから溢れるほどに紅茶をそそぎながら優雅に微笑んだ。
その姿から困っている様子はちっとも感じない。
でも、お茶会に来るはずの人が来ないなんて…それは心配になるよね。
「分かったわ、探してくる」
「それはありがたい!では、あちらへ…」
帽子屋は紅茶を飲み干して、部屋の隅を指差した。
私が黒いアリスを追いかけた道とは逆の場所。
そこには空の絵が描かれた壁があった。



