囚われアリスは館の中


「…アリス…?」


返事は返ってこない。

辺りをぐるりと見渡す。

気配はない。

誰もいない。

風なんて吹いていないのに、上空で木々が揺れた。


__カァ、カァ。


まるで、一人になった私をあざ笑うかのように真っ白なカラスが鳴いている。

それがなんだか不気味で、私の足は一歩だけ後ろに下がった。


「…もしかして、先にお茶会に行ったのかな…」


きっと、そうだ。

私が考え事をしていたから気づかなかっただけ。

ふと、カラスの鳴き声が止む。

思わず視線を向けると、真っ黒な瞳が私を見つめていた。

私を見て、ゆっくりと首を傾げるカラス。

そのまま見つめていると飛びかかってきそうで、私は背を向けて走り出した。

急いで来た道を戻り、再びお茶会のテーブルへ辿り着く。

そこに黒いアリスはいなかった。

だけど、さっきとは明らかに違う事がある。

男の人がいた。

大きな帽子。

とろんと垂れた、優しい目をした男の人。

彼はイスに腰掛けたまま、優雅に紅茶をカップにそそいでいる。


「おや、これは可愛らしい客人だね」


その視線が私に向いた。

柔らかに細められた瞳。

私はまだ荒い呼吸を整えて、問いかけた。


「あなたは、誰?」