そのまま片手で、プチッと茎をへし折った。
『トゲが生えてて危ないわね、指を刺さないようにハンカチで包んで…』
黒いアリスは黒いハンカチを取り出してバラを丁寧に包み込むと、それを私に差し出した。
『はい、どうぞ。お茶会のテーブルに飾ってね』
__きっともっと華やかになるはずよ。
黒いアリスから手渡されたバラを両手で優しく持つ。
トゲに守られた白いバラは、繊細なレースで縁取りされた黒いハンカチにふんわりと包まれている。
このバラのお花…どこかで見たような…。
ぼーっとバラを眺める。
どこからか、チクタクと時計の音がした。
「このお花、何でこんな所に一輪だけ…?」
芽生えた疑問。
バラが生えていた所へ視線を向ける。
そこには草があるだけで、バラはもう一輪も咲いていなかった。
それどころか、さっき黒いアリスがちぎっていた茎も見当たらない。
首を傾げる。
あれ…?
黒いアリスはどこからバラを摘んだんだっけ…。
確か…。
「ねえ、アリス。さっきの白いバラってどこに咲いて__」
顔を上げる。
隣には、誰もいなかった。



