囚われアリスは館の中


長い一本道を進む。

伸びた木々。

カラスの鳴き声。

どこからか聞こえる水の流れる音。

壁の景色は相変わらず描かれた偽物で、窓は見当たらない。


「本当にこっちであってるのかな…」


独り言を呟くけど、返事をくれる紫のネコさんはもういない。

ただひたすらに足を動かした。

手のような形をした大きな木の枝の下をくぐり、狭い通路を抜けたその先。

ふわりと上品な香りが鼻をくすぐった。

漂うそれは、今まで嗅いでいた花の香りより新鮮に感じる。

自然と早くなる足が向かう先には、先客がいた。

全身が黒い影みたいな姿の女の子…アリスが、咲いた花に顔を近づけている。

それからすぐに私に気づいた様子で、彼女は大きく手を振った。


『あぁ、やっと来てくれたのね。私、待ちくたびれちゃった!』


「ごめんなさい、途中であなたの事を見失っちゃったの」


『そんな事より見て、このお花…とても美しいでしょう?』


黒いアリスは咲きほこる一輪の花を指差しながら、嬉しそうな声を上げる。

その花の名前を、私は知っていた。


「うん、キレイな白いバラだね」


『あら、このお花は“バラ”という名前なの?あなたって私より物知りなのね』


黒いアリスが白いバラに手を伸ばす。