「取りあえず、ここで寝るのはオススメしないニャア」
「そうなの?それはなぜ?」
「ここらは“帽子屋”のナワバリだからさ」
「…“帽子屋”…?」
今度は私が首を傾ける番だった。
知らない人だ。
帽子屋と呼ばれているという事は帽子を売っているんだろうか。
「おっと、下手にアイツへの興味は持たない方がいいニャア…それより黒いアリスを探しているんだろう?」
ネコさんが部屋の更に奥を指差した。
その指先の爪は紫色に塗られ、鋭く尖っている。
「ほら、この先のどこかに正解の道があるはずさ…行って探してみるといいニャア」
「そこに黒いアリスがいるの?」
「さてねぇ?いるかもしれニャアし、いないかもしれニャいが…それならそれでいいのさ」
そう言い終わり、ネコさんが口元に右手を添える。
「う~ん、やっぱりここは煙たくて好まないニャア…それじゃあアリス、また縁があれば会おう」
ケホッと咳き込む音を残し、ネコさんの姿が消えていった。
私は辺りを見渡して呟く。
「ここ、そんなに煙たいかしら…?」
少し考えたあと、首を振る。
今はそれより、黒いアリスだよね。
部屋の奥を目指して歩き始めた。



