「アリス!ねえ、アリスってば…どこに行っちゃったの?」
そう呼びかけるけど、返事はない。
人の気配もしない森の中を、当てもなく歩く。
木の上では白いカラスがカァカァと鳴いていて、私を見るなり翼を羽ばたかせながらどこかに飛んでいった。
やがて広く開けた場所に辿り着き、足を止める。
「少し休もう…」
その場で座り込み、天井を眺めた。
森に見えても、ここは部屋の中。
外の世界をイメージしているのか、水色に塗られたそこには白い雲が描かれている。
「今、お外は何時なのかな…」
最初にいた部屋。
あの場所もそうだったけれど、この建物には窓が一つもなかった。
「窓がないなんて、おかしな話だよね」
呟き、小さく息を吐く。
たくさん歩いて、走って…少し疲れてしまった。
体が気怠いのも、きっとそのせい。
まどろむ目元を優しく擦った。
「…少し…少しだけなら、いいよね…?」
体を横にして、そっと目を閉じる。
静かな部屋の中、聞こえるのは規則正しい自分自身の呼吸の音。
意識が心地良く遠のいていくのを感じて、身を委ねようとした、その時。
「こんなとこで寝たら体に悪いニャアよ~」
耳元で、聞き覚えのある声がした。



