あたし恋をしてるかも【恋愛短編集】



「えー!那智、お前なぁ…!」


どうやら那智くんからの電話らしい。


どうしたんだろう。

何かあったのかな?



電話が終わると、田口くんはため息をついた。


そして苦笑いしながらこう言った。



「那智がさ…今起きたらしくて、こっち来るのにあと二時間はかかるみたい。」


「えっ?」



えっ?

本当に?

嘘じゃないの?


だってそれじゃぁ…。

田口くんとふたりきり。


どうしよう。

嬉しい。

いけない。

頭が混乱する。



「ねぇ、待ちきれないしさ、先にふたりで行っちゃわない?」


私を落ち着かせたのは、思いもよらない、田口くんの一言だった。



「え?でも…。」


「いいって那智は!時間もったいないし、行っちゃおーよ!」



そういって田口くんは遊園地へと歩きだした。


戸惑う私を振り返り、手招きをする。



どうしよう…。

やっぱり私、嬉しいよ。


田口くんとふたりの時間。

嬉しくてたまらないよ。



若菜、ごめん。

少しだけ。

ほんの少しだけ、許して。