泣いちゃうから、離して!
心の中でつぶやきながら、大和を見つめる。
大和は、今にも泣き出しそうな私の顔を見てニヤリと笑った。
「なーんちゃってな!!」
悪意に満ちた笑顔で、先生が言い放つ。
「へ…?大和?」
「俺の実家、千葉県だけどな。」
千葉県。
東京の、隣の?
「え、え?先生の実家が、千葉?」
「おう、俺の赴任する学校は船橋。ちなみにお前の行く高校から電車で30分。」
……。
やられた。
完全に、だまされた!
信じらんない!
「バカ…、大和のバカ!バカ!バカー!」
悔しさと、怒りと、安心で、さっきまで我慢していた涙が一気に溢れてきた。
「おいおい、泣いてんじゃねーよ。冗談だっつの!」
「だって、だってぇ。大和が、私から離れて行っちゃうのかと…。ふ…ふえぇ…。」
私は泣きながら、ポカポカと先生の胸をたたく。
いくらなだめられても、私の涙は止まらない。

