それから一時間が過ぎた。
先生の素早い作業のおかげで、残り30部くらいを綴じたら終わりだ。
それまで黙って作業を続けていた先生が、急に語り始めた。
「お前さ、卒業したら都内の高校に進むだろ?」
「へ?そうだけど、なんで?」
「いや…。」
先生が珍しく寂しそうな表情を見せた。
私の卒業、やっぱり先生も寂しいんだ。
「大丈夫だよ、大和!私だって寂しいけど…休日とかあるしさ!」
先生を励ますように、明るく言ってみせる。
しかし先生の顔は、一向に晴れない。
「いや、違う。違うんだ七瀬。ずっと言おうと思ってたんだけど…。」
「大和…?」
すごく嫌な予感がした。
心臓が、ドキドキと音をたてる。
何の話かはわからないけれど、きっと聞いてしまったら冷静じゃいられない。
そんな気がした。

