「ねぇ綾さん、そろそろ帰ろうか。」
カフェオレを飲み終えた太陽がささやくように言う。
その柔らかい笑顔は今も昔も変わることはなく、私の胸はしめつけられる。
こんなにも愛しい気持ち、生まれて初めて手に入れた。
周りから見たら、頼りない後輩の彼氏。
だけど私からすれば、ただひとり、かけがえのない存在なのだ。
「そうだ、綾さん。今日は夕日が綺麗だから、土手を歩いて帰ろうよ。」
太陽が窓の外を指差す。
指の方にある夕日は、ぼんやりと赤く温かく、まるで太陽の笑顔のよう。
「いいよ、早く支度してっ!」
私と太陽は夕日の見える土手を目指し、夕暮れの図書室を後にした。

