それからというもの、私はいつも赤星先輩を目で追っていた。
だけど相変わらず人見知りな先輩は、1年生と絡むことは少なく、時間だけが過ぎていく。
私からアタックをするでもなく、ただただ見つめるだけの日々。
先輩はかっこいいのに女っ気がなく、そのことがますます私を安心させてしまった。
そのため、夏になっても私は名前を覚えてもらったくらいで、特に何も進展がなかった。
夏休み。
先輩のバンドが、外のライブハウスで企画を行うと聞いた。
今までも何回かライブハウスでやっていたらしいが、私は今回、初めて行ってみることに決めた。
とても小さなことだが、私なりの進歩だ。
きっと長い夏の日が、私を少しだけ不安にさせたのだろう。
新宿にあるライブハウスはこじんまりとしていて、小さな緑の扉が目印。
私はいつもよりほんの、ほんの少しだけ化粧に時間をかけて出かけた。