色褪せて、着色して。Ⅷ~スノードロップ編~

 こんな幸せなことがあっていいのだろうか。
 本日2回目の頬をつねってみたが、痛かった。

 バニラはこんな日が来ることを予知していたのだろうか。
 お出かけ用の服を用意してくれていた。
 白いワンピースはサイズがぴったりで。
 急いで着替え身だしなみを整えて、下に降りた。

 太陽様は上着を脱いで、白いTシャツ姿で待ってくれていた。
「太陽様、上着は?」
「あ、なんか。汚れてたみたいで。バニラさんが洗濯してくれるらしいっす」
 よれよれだったもんね。
 心の中で思って口には出さなかった。
 太陽様に「寒くないですか」と訊くと「全く」と言って何故か腕の力こぶを見せてきた。
 筋肉があるから寒くないってことなのか?

 考えてみると。
 こうやって太陽様と一緒に出歩くのっていつ以来だろう?
 緊張のあまり、右手と右足が同時に出て。
 ロボット状態で歩いているが、太陽様は気づいていない。
 ちらりと太陽様を見ると、腕の筋肉がやたらと目に入った。

 特に会話することもなく、花園に突入して。
 はた・・・と足を止めた。
 王家の領地の前にある小さな花園は、花壇があるだけのはずなのに。
 いつのまにか、ベンチが設置されていたのだ。
 それも、幾つもある。
「ベンチなんてありましたっけ?」
 太陽様を見て、「あっ」と声を漏らした。

 久しぶりに来て、忘れていたけど。
 ここは、オーロラ姫も来るところだった。
 身体の不自由なオーロラ姫のために、王家だか国家騎士団だかの誰かがベンチを設置したのだろう。
「ベンチっすね。座りますか」
 と言って、太陽様はゆっくりと座った。
「えと…失礼します」
 太陽様とは少し離れて座った。

「セシルさんが無事に戻ってこれて良かったです」
 開口一番のセリフがそれか?

 連れ去られたのいつだと思ってんだよ。
 気づいたら、太陽様を睨んでしまっていた。
 太陽様は背は高くないけど。
 手足が長い。
 半袖だと余計に手の長さが目立つ。
 鍛え上げられた腕が嫌でも目に入る。
「セシルさん、あの時はすいませんでした」
 次に、太陽様は謝罪してきた。