財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

七月上旬の暴走の日。

あの日のことは今でもよく覚えている。

交差点へ差し掛かった時だった。

反対車線の先頭で信号待ちをしている一台のリムジンが目に入った。

黒塗りのMercedes-Maybach Pullman。

普通の高級車とは明らかに格が違う。

あんな車、日本中探してもそう何台もない。

それに、前部にはベンツのマークの代わりに、西園寺の紋章が付いていた。

だから一瞬で分かった。

西園寺家だ、と。

「うわ……。」

碧が頭を抱える。

「最悪じゃん。」

「だろ?」

俺も苦笑した。

しかもあのリムジンは異様に目立つ。

高級感とか威圧感とか、そういうものが全部詰め込まれている。

隣を走っていた大地なんか、完全に目を輝かせて、

『すげぇ……』

とか呟いてたくらいだ。

上京して初めて東京スカイスリー見た子供かよと思った。

「で?」

翼が聞いてくる。

「六花に見られた?」