『下賤な平民』
聞き慣れた言葉。
旧公家、旧華族が上層部のほとんどを占める政財界では決して珍しくない価値観。
けれど、その言葉を聞いた瞬間、隣に立つ陽菜の顔が頭に浮かぶ。
昼休みに楽しそうにファミレスの話をしてくれた陽菜。
学校が終わった後もアルバイトを頑張っている陽菜。
いつも私を気遣ってくれる陽菜。
その陽菜も『下賤な平民』に一括りにされてしまうのだ。
私はそっと拳を握り締めた。
そして、その時ようやく理解した気がした。
私はずっと守られてきた。
大切にされてきた。
愛されてもきた。
紫苑兄様も。
玲央兄様も。
使用人たちも。
みんな私を大事にしてくれている。
けれど――
その代わりに。
私には自由だけが与えられていないのだと。

