財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

 翌朝。

 私はまだ少し眠たい目を擦りながら、自室の中央に置かれた旅行鞄を見つめていた。

 中身は驚くほど少ない。

 数日分の着替え。

 本を二冊。

 筆記用具。

 それからお気に入りの小さな髪飾り。

 それだけ。

 もっとも、道明寺家には必要な物など何でも揃っているのだろう。

 西園寺家と肩を並べるような財閥なのだから当然だ。

 だから荷物が少ないことに問題はない。

 問題なのは別のところだった。

 行きたくない。

 心の底からそう思う。

 昨日突然告げられた花嫁修行。

 会ったこともない三つ子。

 誰か一人を射止めろという父の命令。

 何一つ納得していない。

 それでも拒否権はなかった。

 私は昨日の躾で大きなあざのできたお腹をさすりながら小さくため息を吐く。