──そうして、最悪な空気の中。
ユキがやってきた。
ユキは入ってきた瞬間、フロア全体に一度だけ目を走らせた。
リンコの不満気な顔。
凍り付くサンコンと、バン。
そして、情けなく立ち尽くす私。
それだけで全てを察したみたいに、ユキはリンコの腰に手を添えて「座ろう」と促した。
二人が並んでソファに腰を下ろした。
会話までは聞こえないものの、ユキは終始リンコを宥めているようだった。
それでもリンコは納得がいかないらしく、何度も身振りを交えて何かを訴えている。
「………」
とても居たたまれない気持ちの中。
フロアのBGMはひとつの曲が終わり、次の曲へと切り替わる。
その束の間の静寂に割り込んだ、リンコの声。
「アタシ、あの子嫌ぁい」
そう言って、ビシッと向けられた指の先。
そこにいたのは、──私だった。
え?
なんで私?
自分が何も悪くないなんて思ってない。
それでも『嫌い』の一言は、理不尽に感じる。


