私は使い終えたダスターを洗おうと、バーカウンターの中へ入った。
すると今度は、バンがリンコに呼ばれた。
てっきり私と同じように席につくのかと思いきや、バンはすぐに戻ってきた。
カウンター越しに、何やら口をパクパクと動かしている。
BGMが大きいから、何を言ってるのかわからない。
首を傾げると、バンはすぐさまカウンターの内側に回り込み、私に大声で怒鳴った。
「酒作れっつーの!」
「わかった。何を作ればいい?」
「知らねぇよ!」
「オーダー取ったんじゃないの?」
「オーダー取ってお前に頼んだのに、すっ呆けてくるから俺も忘れた!」
……は?
「あんな距離で聞こえるわけないじゃない」
「ピンク色のカクテルだ。カタカナの。名前わかんねぇ」
信じられない。
それだったらもう一回聞いてくればいいのに。
「私、もう一回聞いてくる」
カウンターを出ようとした瞬間、バンの靴底が私の足先を──ダンッ!と踏みつけた。
「……っ」
「馬鹿か!俺がオーダー聞き取り損ねたことになるだろうが!」
「じゃあ、どうしろっていうの?」
「なんでもいいから作れよ!ピンクのカクテル」
「そんなこと言ったって、いっぱい種類あるし」
「さっさと作れ!違ったらお前がミスったことにしろ!」


