じっとフロアを見渡すリンコ。
声をかけたのは、サンコンだった。
「まだ準備中でして」
「だから何?」
「……はい?」
「客じゃないから。いいでしょ?」
「客じゃないっていうのは……」
「アタシはリンコ。ユキちゃんから何も聞いてないの?」
サンコンは、「あ」と小さく声を漏らした。
「失礼しました」
「案内して頂戴」
「はい」
頭を丁寧に下げてから、フロア奥のソファ席へとリンコを案内した。
……一体、どういうこと?
そこからはとても慌ただしかった。
サンコンはオーダーを取り、ドリンクを用意する。
バンはリンコに曲の好みを尋ね、レゲエ調のメロウなラブソングをBGMに設定。
私は照明を営業用に切り替え、出しっぱなしの掃除機やマット類を片付ける。
ひとまず、見た目だけでも開店した状態に整えた。
一通りのセッティングを終えても、サンコンは落ち着かない様子のまま。
「私はユキに連絡を入れてきます」
そう言って、バックヤードへ消えていった。


