どれだけ祈っても、願っても。
時間がとまることなく、週末は訪れる。
バンに罵倒を浴びせられながら、機械的に開店準備をこなした。
一人きりの買い出しが、仕事中の唯一の息抜き。
いつもより少しだけ、店に戻るのが遅くなった。
……あれ。
AnBarの軒先に、誰かが立っている。
「あら!カナコ」
そう艶やかに微笑んだのは、今日もジュエリーのようなリップを輝かせるリンコだった。
「ちょうどよかった。お店、入れてくれない?」
「少しお待ちいただけますか?まだ開店時間じゃなくて」
今はまだオープン前。
看板も出していないし、中の準備だってきっとまだ終わっていない。
「そんなのいいわよ」
え、何が?
リンコはカツ、カツ、とヒールを鳴らし、AnBarのドアを押し開いた。
入口に置かれたドアマットや電飾看板を器用にかわし、奥へと進んでいく。
「リンコさん?ちょっとっ、ちょっと待ってください!」
リンコは止まらない。
後を追ってフロアに入ると、そこは案の定、開店準備の真っ最中。
明るい黄色の照明の下、テーブルに灰皿を並べていたバンと、掃除機をかけていたサンコンが、揃って目を丸くした。


