余所者-よそもの-【 2 】



「ユキちゃん、今から行かない?AnBar、だったっけ」

「駄目だ」

「なんで?連れて行くって約束したじゃない」


リンコが不満そうに口を尖らせた。

ユキはちらりと私のことを見てから、すぐに何事もなかったかのように視線を逸らした。


「今日は、駄目だ。他の店ならいくらでも付き合うから」


……いくらでも?

あれ。
なんだか、変だ。

ユキは自分の時間を簡単に他人に割くような人じゃない。

それに、自ら誰かをAnBarに連れてくるなんてこと、これまで一度も無かった。


──この人は、ユキにとって特別な人なのかな。


リンコは納得のいかない様子で「ふぅん」とボヤくと、私に視線を戻した。

「カナコはいつもお店にいるの?」


……もう呼び捨て。

なかなか距離感の近い人だな。


「いえ、出勤は週に3日です」

「そう。そしたら……」

リンコがスマホを取り出した。


「連絡先交換しましょ。出勤の日を──」


ユキの手が突然、割り込んできた。

リンコが差し出しかけたスマホが、私から遠ざかる。


「行くぞ。ソイツは仕事中」

「いいじゃない、少しくらい」



「ソイツのことは構うな」



その瞬間、思わず眉間に力がこもった。


……なんで、そんな言い方をするんだろう。


ユキの横顔は、冷え切っている。

いつもの顔なのかもしれない。


だけど、どうしてかな。

いつもの表情よりも、どこか……何か、違う。


目の逸らし方が、バンに似ていた。

『見たくない』
そんな嫌悪の感情さえ、無表情のその奥に透けて見えた気がする。


二人は私のすぐ目の前で、いくつか仲睦まじげに言葉を交わした。

再び隙間なくぴったりとくっついて、私の前を通り過ぎていった。