AnBarで働く中で、心の救いはサンコンが変わらず接してくれることだった。
「カナコさん、今日の買い出しです」
あくる日の夕方。
買い出しメモを受け取った。
今日はバンがいない。
私とサンコン二人だけの営業日。
それだけで私の心はいくらか軽く、「行ってきます」と買い出し用のポーチを提げて、AnBarを出た。
露天街の手前に差し掛かった頃だった。
私の歩く道の向こうから、ひと際目を引く綺麗な男が歩いてくる。
夕暮れの街並みの中でも、その姿はすぐに目に留まった。
ユキだ。
声をかけようと思ったけれど、口を結んだ。
ユキの隣には、見たことのない綺麗な人が、ぴったりと寄り添っていた。
──コツン、コツン、と。
アスファルトに高らかに響く、ヒールの音。
薄いカーディガンの裾を翻し、くるくると巻いた艶やかな長い髪。
ジュエリーみたいに瑞々しく輝く、ぷっくりとしたリップをユキの耳元に寄せて。
とても親密そうに、腕を深く絡めて歩いていた。


