営業が始まると、バンは宣言通りに私を追い込んできた。
「どけよ」
ホールを歩いていれば、すれ違いざまに肩をぶつけられた。
その拍子に、手に持っていた灰皿の中身が床一面にバラバラと散乱する。
薄暗いフロアで膝をつき、散らばった吸い殻を拾い集めようとすると、手の甲をバンの靴底がグリグリと踏みつけた。
「邪魔」
お客さんにお酒を出そうとすれば、後ろから突き飛ばされた。
よろめいた拍子にグラスの中身が零れ、お客の膝をアルコールで濡らしてしまった。
私は何度も頭を下げて謝り、クリーニング代を支払うことを約束して、その場は何とか収まった。
「クソ女」
カウンターでお酒を作ろうとすれば、私の手元を狙ったように酒瓶を倒された。
そのボトルは店でも特に高価なウイスキーだった。
中身がほとんどなくなってしまったことをサンコンに報告した。
「わざとではないにせよ」と、前置きをされた上で叱られた。
その日の晩。
全ての営業が終わり、へとへとになって部屋に戻った。
「………」
ベッドの上には再び、ゴミがばら撒かれていた。
『バンくん、ゴミ出しをお願いします』
『はいよ』
営業終了後のサンコンとバンのやり取りを思い出した。
バンは本気だ。
本気で、私をここから追い出す気だ。


