「だったら、誰がその居場所をカナコさんに与えたのか。一度よく考えてください」
目を見開き、しゃがみ込む野間を見下ろした。
膝に肘をついた野間の右腕に、とぐろを巻く黒い龍の刺青。
蛇を丸のみにする龍が、私を睨みつけている気がした。
「……AnBarに、何かする気?」
手にじっとりと湧いた嫌な汗を拭うように、服の袖を握りしめた。
野間は静かに立ち上がる。
「脅したいわけじゃない。恩だってあるでしょって話だ」
「………」
「今日はただ、紫藤さんに謝る機会をあげてほしい」
「………」
「僕は強引が嫌いだ。カナコさんの足で、カナコさんの意志で、着いてきてください」
脅しじゃない?
強引が嫌い?
おかしなことを平気で言う。
野間は、私の逃げ道を淡々と塞ぐ。
この人だって、多夜と大差ない。
……何を考えているか、わかったもんじゃない。


