「はぁぁぁ……ビビったぁぁぁ」
AnBarを出て、数メートルほど歩いたところ。
野間は心臓のあたりを手で押さえながら、大げさにしゃがみ込んだ。
「なんなんすか?あの人。すごくいい目をしてたなぁ。瑞生(ミズオ)さん?でしたっけ」
「………」
「久しぶりにゾクゾクした……。どおりで紫藤さんが目をつけるわけだ」
「………」
「もしも。もしもっすよ?紫藤さんと瑞生さんがやり合うことになったら、それはどんな結果になるんだろう。あの人、紫藤さんにどこまで張れるっすかね?」
「………」
「ねぇ?カナコさん」
さっきから何を楽しそうに喋ってるんだろう。
きっともう、AnBarのみんなは私に喋りかけてくれない。
大切な居場所を、奪われた。
「……ひどい」
思わず、漏れた。
「なんです?」
「野間くんは、何がしたいの?」
「何がって、何ですか?」
「私の味方だと、思ってた」
「僕がいつカナコさんの味方って言いました?」
「約束したのに」
「AnBarに乗り込まないなんて約束だってしてないっすよね?」
「うそつき」
野間は私が大切にしているものを知ってる。
何をされたら私が嫌がるか、全部お見通し。
だから、一緒に守ってくれているのだと思ってた。
寄り添ってくれる野間を。
シトウで唯一、私を理解してくれる野間を。
……信じていたのに。


