「………」
サンコンは、ジロリと野間を睨み上げたまま。
漬物石みたいになって、バンを押さえ続けた。
「ああ、よかった。ここの用心棒さんっすね。噂は聞いてますよ、いろいろと」
「………」
「押さえてくれてよかった。じゃないと、うっかり手を出してしまうところでした」
「……御託は控えていただけますか」
「そっすね、そっすね!僕は僕の目的を果たすことにします」
張り詰めた空気の中。
狐の面を被ったような薄気味悪い笑顔を浮かべた野間が、カウンター前に立ち尽くす私にじわじわと、だけど一直線に近づいてくる。
一歩。
また一歩と、その距離が縮まるたびに、逃げ場がひとつずつ塗りつぶされていく感覚がした。
「行きましょうか。カナコさん」
「なん、で……?」
なんで、野間くん。
どうして、ここに来たの。
「なんで?言っていいんですか?」
……え?
「違っ……やめ────」
「紫藤さんが待ってるっすよ、あの夜からずっと。あなたに会いたいと言って聞かないんです」
頭の中が、真っ白になった。
どこを見たらいいのかわからなくなって、ただ、野間の口元の一点を凝視した。
みんなが、私をどんな目で見ているのか。
少し、想像しただけで、今すぐにここから消えてしまいたくなった。
バレた。
バレた。
みんなにバレた。
知られた。
知られて、しまった。


