ユキはやっとカウンターチェアに腰かけた。
「サンコン、飯」
「何にしますか?」
「何がある?」
「炒飯か、たこ焼きか……パスタ。今はこのあたりですかね」
ユキは少し不満そうな顔をした。
AnBarには調理設備がないから、食事と言えばレンジで温める冷凍食品か、出来合いのもの。
どうしたってレパートリーが偏ってしまう。
「じゃあ、炒飯」
ユキは頬杖をついたまま、私の方に身体を向けた。
「かぁこ」
「はい」
「今度、ハンバーグ作って」
「いいですけど……次はいつお家でご飯食べれそうですか?」
「来週はいつ俺んち来る?」
「ちょっと待ってくださいね」
ジーンズのポケットからスマホを取り出し、スケジュールを開く。
「来週は月曜日と、水曜日と、日曜日です」
「じゃあ水曜日」
「わかりました」
スケジュールに『ハンバーグ』とだけメモをつけた。
ハンバーグか。
あとで美味しそうなハンバーグのレシピを探してみよう。
そんなことを考えていると、手元のスマホが振動した。
──ブー、ブー。
──ブー、ブー。
着信だ。
なかなか、止まらない。


