「カナコさん」
「ねぇ、野間くん」
「……なんすか」
「あの子、知ってる?」
前を指さすと、野間はその後ろ姿に目をやって「ああ」と頷いた。
「紫藤さんのストーカーっす」
「ストーカー……?」
野間の表情はどこか冷めていた。
嫌っているのか、興味がないのか。
視線も、話題も、全部アオイから逸らすように、私の肩に手を置いた。
「気にしないでいいっすよ。とにかく、帰りましょ」
私はそっぽを向いて「イヤだ」と、野間の手を払いのけた。
「……わかってます。Re:bidoには帰しません。カナコさんの家に帰します」
「………」
「……今度こそ」
私が野間を見れば、野間は私から目を逸らす。
「まだ……AnBarには帰れない」
「朝まで時間、潰しますか」
「……うん」
野間はどこか店に入ろうか、と言ったけれど、私は首を横に振った。
立ち尽くしたまま動かない私に、野間は困ったようだった。
結局。
私たちは、道の脇のコインパーキングに入った。
私は空いた駐車スペースのタイヤ止めに腰を下ろした。
野間はそのそばにバイクを止め、シートに座る。
「………」
「………」
野間とは話す気がなかった。
野間だって、私に話しかけようとはしなかった。
アオイはちゃんと帰れたかな。
冷たいコンクリートブロックの上で、私はそんなことを考え続けた。
他のことを考えようとすれば、頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだったから。
野間は、夜が明けるまで。
冷たい夜風を遮るように、ただ黙って私のそばにいてくれた。


