久しぶりに、化粧をした。
服は、一張羅を着た。
足元には、シドが置いていったスリッパを履く。
最後に、一目だけ。
シドの目を狂わせた、あの女の顔を見てやろうと思った。
……だけど、後悔した。
会わなきゃよかった。
求めてもいない答え合わせを、突きつけられた気分だった。
シドを癒せるのは、自分だけだと思ってた。
私は、罪悪感でしか繋がれない。
私は、彼の希望になんてなれない。
もう、遅い。
シドにも私にも、希望なんてもうないんだから。
――だけど。
もし……あの子の言葉が本当なら。
もし本当に、終わりの街が、希望の街で。
在りもしないはずの、奇跡が起きて。
彼がもう一度、心から笑える日が来るのだとしたら。
それは、私も、見てみたい。
私はただ、大好きな彼に笑ってほしかった。
そのために、どんなことも受け入れた。
そんな、救いようもないことを……今さら、思い出す。
「ふふ」
愛おしいシドの。
あの、いたずらな笑顔。
どうして今まで忘れちゃってたんだろう。
ごめんね。
そうして私は、久しぶりに心から笑って。
そっと、静かに瞼を閉じた。


