多夜は奥歯を噛み締めた。 やがて、紫藤が虚ろな足取りでフロアに戻ってくる。 「多夜」 「………」 「いない」 「………」 「アイツは、どこだ……!!」 多夜は何も言えない。 自分の目論見が、根底から崩れていた。 紫藤は頭を抱え、まるで独り言のようにブツブツと喋り続けている。 Z地区に放り込まれたのは確かな情報か。 ドラッグを入れられたのは本当なんだな? じゃあ、どこに行った。 そのどの言葉からも、多夜は目を逸らすしかなかった。