「お前、どうした」
「シド、私」
「言え。何があった」
シドは掻くように私の身体を寄せて、腕の中に押し込めた。
頭の後ろを大きな手で包まれ、全身を抱きすくめられる。
なぜだか、切なさが込み上げた。
「もう……こういうこと、しないでおこうと思うの」
ぽつりと落とした、声。
決心したはずのそれは、想像より弱々しく頼りなかった。
「前のこと、まだ怒ってんのか」
前のこと。
シドが衝動のままに私を抱いたこと。
私のことを『カエデ』と呼んだこと。
「ううん」
違う。
そうじゃない。
「じゃあ、なんでだよ」
耳を押し当てた胸から、声が響く。
眉間に力がこもる。


